その海から

眠っている人の
まぶたを押して歩く

みな安らかな寝顔なのに
淋しさや悲しみの類の
答えが返ってくる

屋根に星屑が
降り積もる音がする
明日の朝までには
溶けるのだろう


+

メニューに
僕の名前が書いてあった

隣の人が僕を注文したので
こちらへどうぞ
と店員に案内される

注文した人と対面する
警報が鳴って
人々が防空壕のある方に
逃げていくのが見える


+


慈しんだ
あの空を
この朝を
食卓のピーナッツバターを
素晴らしい、素晴らしいと言っても
それを咎める者など
誰もいなかった