ただいま51個


他所様の庭で
席替えは続けられて
友だちはまた沖へと
流されていく
奥さんと娘さんは
まだ栗の皮を剥いていますか
黒板けしをきれいに叩くと
新しい学期は
もう始まっている
 

手足が絡み合って
体操をなくした
途中、味のしない
地下鉄に追いかけられた
この海は
意味のない繰り返しだね
結論はきみに出して欲しい
と言ったら
 

テーブルの上に
林檎が一つ置かれている
の音がする
私の生きている、は
不確かな幻かもしれないけれど
幻だった例もないのだ
 

自転車のペダルをこいでいると
それは何かの高さの
ようでもあった
転落しないように、と
二人で笑って
幸せだったかもしれない
 

ハウスの裏は
どこまでも川がつながっています
余計なお世話ですが
ポテトのSはいりませんか
という店員の辱めにもめげず
僕らは馬の姿のまま
身勝手にギャロップを続けました
 

扉を開ける
また扉がある
今度こそは、と開けると
いつまでも扉がある
もはや
入ろうとしているのか
出ようとしているのか
気づかないうちに
通過してしまった
動かなくなった父の側を
 

犬自身の中に
犬小屋はある
遊ぶのに飽きて
帰ろうとするが
夕暮ればかりが続き
いつまでもたどり着かない
 

こっちのセリフだ
とあっちが言うので
そっちはもう
どっちでもない
そんなことはどうでも良いが
きみが並べた出鱈目の様に
今朝から寂しい
 

鍵盤をひとつひとつ
無くしながら
ピアノが
海を沈んでいく
最後まで
多忙であった