久しぶりに


丘の上にたって色の無い偏差値について語り始めると
バナナの風が熱帯雨林の方角から吹いて
僕らの日記の文字は穏やかに飛ばされてしまう

間違えることなく世界にはたくさんのリビングがあり
それは決して間違いではないのだけれども
たくさんの人々が呼吸の真似事をしているたくさんのリビング
その隣にある僕らのいない僕らのリビングでは僕らが不在であるという
回覧板が音もなくドアノブのあたりで揺れている

 リモコンのチャンネルが誤って押さた
 つけっ放しのテレビでは水浸しのワイドショーが始まった
 自転車が補助輪をなくして二回角を曲がったから
 先生、と呼ばれて振り向いた
 その人は先生ではなかった
 それでも僕らが先生と呼び続けたので
 いつまでも誰かの行間で振り向き続けなければならなかった

 
今日はここまで。