続き


台所で人形を洗っていると
まだ生きた人しか洗ったことがないのに
自分の死体を洗っている気がして
かわいそうな感じがしました
列車が到着したので
あまり混んではいなかったけれど
代わりに習ったばかりの
笹舟を浮かべておきました
すでにお義父さんは乗っていて
オルガンの前に座ってました
どうやって音を出すのかわからない
と悲しげな顔をしながら
鍵盤に触っているところでした
あの子をよろしく頼む、と
お義父さんは言うけれど
どの子があの子なのかわからないから
もしかしたらわたしの
本当のお父さんだったのかもしれません
どこか洗い難いところはあるか聞くので
脇の下
そう答えると
お義父さんは優しい手つきで
人形の腕をもいでくれました