いろいろ

05
テレビの中から自分の名前を呼ばれている気がして振り返るけれど、まだ家に帰る途中の上り坂だった。

06
冷蔵庫の中から出てきた子供たちが行儀良く列をつくり、中庭でチューリップになって咲き始める。

07
生まれてからひたすら乾電池を食べ続けた男が最後の一本を食べ終えると、判定員は悲しそうに「参考記録」の旗を振った。

08
砂漠の真ん中に誰かが落としていった室外機は、まだエアコンと繋がっていることを疑わずに、ファンを回そうとする。

くにゅくにゅ列車が
小さくて古いバス停から
駝鳥を三羽乗せて行った
駝鳥たちが仲良く
キャラメルを分け合っているのが
窓の外からも何となくわかった
他に何も無い妹の手を引いて
僕は河原を歩いて行く
途中、雑草のようなスミレの花を
母のために摘んで帰った
母はとても喜んでくれて
優しく痩せた手で新聞紙にくるみ
多分、大切にしてくれるにちがいなかった
疲れたでしょう
と母はバターと匙を持ってきてくれたけれど
血の味がするから、と
妹は少し嫌々をした