いろいろ
05
テレビの中から自分の名前を呼ばれている気がして振り返るけれど、まだ家に帰る途中の上り坂だった。06
冷蔵庫の中から出てきた子供たちが行儀良く列をつくり、中庭でチューリップになって咲き始める。07
生まれてからひたすら乾電池を食べ続けた男が最後の一本を食べ終えると、判定員は悲しそうに「参考記録」の旗を振った。08
砂漠の真ん中に誰かが落としていった室外機は、まだエアコンと繋がっていることを疑わずに、ファンを回そうとする。
くにゅくにゅ列車が
小さくて古いバス停から
駝鳥を三羽乗せて行った
駝鳥たちが仲良く
キャラメルを分け合っているのが
窓の外からも何となくわかった
他に何も無い妹の手を引いて
僕は河原を歩いて行く
途中、雑草のようなスミレの花を
母のために摘んで帰った
母はとても喜んでくれて
優しく痩せた手で新聞紙にくるみ
多分、大切にしてくれるにちがいなかった
疲れたでしょう
と母はバターと匙を持ってきてくれたけれど
血の味がするから、と
妹は少し嫌々をした
家電
03アイロンの代わりにコンニャクをかけると、誰かが出口で待っていてくれる気がする。
04
空を飛んで行くドライヤーの群れを眺めながら、化粧の上手くなった君が生まれ故郷の見取り図を描いている。
書きかけ
なんか、もうちっと淡々と書いたほうが良さげかな。
くにゅくにゅ列車が
小さくて古いバス停から
駝鳥を三羽乗せて行った
駝鳥たちが仲良く
キャラメルを分け合っているのが
窓の外からも何となくわかった
わたしも乗りたいな
と小さく言う妹の手を引いたまま
僕は水に沿って河原を歩いた
途中、雑草のようなスミレの花を
母のために摘んで帰った
母はとても喜んでくれて
優しく痩せた手で
大事そうに新聞紙にくるみ
テーブルの上に置いた
疲れたでしょう、バターをお舐めなさい
と母はバターと匙を持ってきたけれど
血の味がするから、と
妹は少し嫌々をした
家電
01
冷蔵庫売り場の前で火遊びをしている少年のシャツは裏返っていて、肌がまぶしい。02
扇風機の真似をして首を振る君の羽が朝から壊れているのでたいそう困っている。
図書館物語
24
25
雪が降った日は、図書館に来ている人みんなで雪だるまを作るけれど、名前を何にするか決める前にいつも融けてしまう。25
春になると図書館の周囲一面はきれいなお花畑になって、時々軽い怪我をする人がでてくる。26〜27