むむむ


街は保とうとする私たちの外形
私たちは不規則に
膨張を繰り返すものの総称
ほのかな光を発し
自分自身の中を飛行する寂しい
、の電力を運ぶため
送電線は走る
路上に放置されたコンクリートの破片
私たちの記憶はその中にあり
私たちはその中にいない


男は、ムラオカです、
とだけ名乗り
金属がより金属に近づこうと
静かに脱皮を続ける
かの口調で
立方体の話をする
別れ際、男は
本当はスズキだったのです、
と言ってそれから
何事も無かったかのように
春の花を満載した自転車に
ひかれた
 

右手と左手は
朝から機嫌が悪い
キオスクで働く兄は
右足と左足を取り違えたまま
勤めに行ってしまった
右岸で寝ている人の夢の中で
左岸の人は今日も忙しい
あと何日
自分は生きるか
 

ハラメシの炊き上がった匂いがする
一年に一度だけ食べられるハラメシは
特段美味しい、ということもないが
風習とはそういうものだ
ハラメシを前に
家族皆で手を合わせる
そのことの意味を誰も知らないが
祈りとはそういうものだ
この日ばかりは
食後のゲップは禁忌である