今日も行くぞ!


長い廊下の一番奥では
補欠部員の僕が
練習です
足と耳のバランスが悪く
あとは残りの
手と声も
まだなれてません
もうひとつの一番奥では
レギュラーたちが
乗り物から降りるのが見えます
彼らはすっかりなれていて
その悲しみも
背負っているかのようでした
顧問の号令にあわせて
いっせいに瞬きをしています
 

交番の前では
制服姿の警察官が
三人で話をしている
一番恰幅の良い人が
見た目とかではなく
一番年上のような口ぶりで
中止が先だろう、と述べて
他の二人が小さく頷く
すぐ近くにあるバケツでは
音も無く
水が蒸発している
 

すっかりと細く
その気になれば
どこの隙間にでも
当てはまりそうなのに
わずかばかりの肉体
その厚みのために
わたしはまだ
いなければならない
遠くから
下校途中の子供たちの
声が聞こえる
わたしにもあんな時があった
そして
その声を聞いていた人が
確かにいたはずなのだ
 

仔犬の眼の中に
なみなみとしている
プールで私が泳いでいると
霧が降っている
フェンスの向こう側
誰かのお墓みたいに
木々が直立していて
いつか仔犬、
あなたの分まで
死んであげたいと思った
 

ミスとミスターと
が徒歩でやって来て
言葉を書いて
殴るように書いて
本当に殴って
簡単な履歴で良かったのに
わたしには何一つ干渉することなく
これは詩だよ、これは詩だよ
と朗読を始め
それからなるべく沢山の
フルーツ風味のドーナツを食べて
これは奇麗だよ、これは奇麗だよ
と空地に咲いていた
セイタカアワダチソウの良いところを
何本か見繕って摘んで
徒歩で帰って行った
ミスとミスターと
であった