ただ今66個


男の人と女の人が
投入口から
コインを次々と入れていく
いろいろな形や大きさの
コインがあるというのに
いつまでたっても
必要な金額に達しない
側では二人の子供だろうか
小さな男の子が所在無さ気に
蟻の行列を見ている
とてもわかりやすく言えば
僕はそんな子供だった
 

夕食の準備をしている妻が
冷蔵庫を覗き込みながら
帰りたい、とつぶやくのを
僕は聞いてしまった
翌日故郷に向かうチケットを
二枚買って帰ると
妻は冷蔵庫の前から
決して動こうとはしなかった
 

焼き鳥が
香ばしい匂いを振りまきながら
暁の空を行く
カルシウムでできた複雑な骨を失い
たった一本の竹串を骨にすることで
初めて得た飛行を
力の限り大切にしながら
もうコケコッコーも
言わないつもりなのだ
 
もの凄いペースダウン。