あと19個


犬をなくした
首輪が転がっている
トビウオの胸ビレを集めすぎて
子供はもう失うことを覚えている
何故だろう
夕日の話ばかりしてしまう
夕方になると
音も無く今
指紋がうそをついた
 

電話ボックスの中で
きみはどうしたら良いのかわからない
電話ボックスにいるのだから
電話をすれば良いのかもしれないが
電話をするべき相手もいないし
電話をしたい相手もいない
知らないところにとんでもない
間違い電話をかけてしまった感じがする
何かを確かめようにも
その電話ボックスには電話が無いので
きみはいることしかできないのだ
 

いとこが辞書のように
眠っている
言葉などいらない
とあんなに言っていたのに
辞書のように
いつまでも疲れていた
 

削除キーの裏側には
ジャムが塗られていた
いちごのジャムだった
ジャムの中には
僕らの家があった
家の窓は外に向かって
開け放たれていた
家の外には
いちごを煮る匂いの
風が吹いていた
それがいったい何であるのか
のような雲が空にはあって
二人が何度いなくなっても
ずっとこのままで良かった