ロッテ、先勝!


穴の開いた公務員が
左手をその穴に通しながら
僕の書置きを右手で審査している
窓口、とは名ばかりの
窓の無い唇から溢れる言葉は
どれもこれも優しいが
何一つとして救いではないし
とどめでもなかった
手続きは粛々と進み
すべてが終わると
入口と書かれた扉から
僕は外に出されてしまう
 
さてさて、あと10個!だ!ロッテ、二連勝!だ!
 

友達がランドセルを背負っていた頃
僕だけが甲羅を背負っていた
ランドセルからは教科書やノートが出てきたが
甲羅には手足を引っ込めることしかできない
いっそのこと亀だったら良かったのに
そう言うと親友は
亀はそう言うんだよ
と笑ったものだ
今はみんな他のものを背負ってる
 

テーブルの上に
一足のスリッパが揃えられていて
その脇には家族に宛てた
白い封筒が置かれている
また父が飛び降りたのだ