あと8個


朝から君の背中が
海になってる
掻いてあげると
さざ波が立って
指先が塩味の濡れ方をする
肩甲骨のあたりには
美しい砂浜が広がり
明日の今ごろには
僕は僕の形をしたまま
打ち上げられているのだろう
気持ちいい?
我ながら馬鹿なことを訊いたと思ったが
気持ちいい
と君は僕の知っている言葉で言った
  

手足が不自由になって
それから
リモコンも家出をした
隣の部屋では
協会長と事務局長が
言い争ってるのが聞こえる
窓辺ではいつまでも
ホースが絡みついている
  

この

呆気も無く
転がっていて
うなじのいやらしい
馬鹿と野郎が


備品なのか
消耗品なのか
さんざん問いただしている
うちに
すっかり
最初から何もないような
シネマを沢山見た後で
刺だらけのサボテンを
君はポケットにしまった