粛々と

青ヤギと赤ヤギが
白ヤギと黒ヤギの
噂話をしていた

水は既に顎のすぐ下にまで
押し寄せていた

目の高さにまで日は落ち
世界は美しいのかもしれない
と思った

明日も牧草の良い匂いが
嗅げる気がした

空に向かって開かれた傷口から
無数の鳩が飛び出していく
いつか僕の名札も返して欲しい

渋谷も池袋も失った
品川の交差点
余白を残したまま
講堂は突っ伏していた
そしてそれから
人々の足音が
少し遅れてやってくる