何かの反動で


ベランダに
干してある
シャツ
パンツ
タオル
靴下
布類は
そこで終わっている
 
やはり一日で100個は無謀だったか
 

人の嘘で
鳥は空を飛ぶ
鳥の嘘で
ドアは人を
閉じ込める
ドアの中で
人は鳥を
飛ばし続ける
 

昔から部屋の中を
川が流れているのに
どちらが上流か
まだわからない
という夢の中で
魚は溺れる
 

カミツキガメ
に噛み付いた
女の伝記
身勝手に生きて
身勝手に逝った
 
まだ14個。100まであと86個。
見てる人がいたら声かけてくれると嬉し。


尖った粘土に
刺さった虫
のように
息だけ
している
 

たくさんの背中を
見すぎてすすむ乱視
合う眼鏡がなくて
今日も世界は
気持ち悪い
 
今日中に100個は無理そうだ。
 

栞の代わりに挟んだ
刺身がもう腐って
臭いから
部屋の隅に寄せる
明日は部屋の外にある
明後日は家の外に出す
 

もう少し
水のように話そう
双子の
手品師と
詐欺師が
シーソーをする
公園で
 

廊下に長い影
長すぎて
壁に折れる
蹴ったボール
その向こうに
雑木林が見える
 

あのビルディング
食べてみたい
明日の話は
それから
 

歯を磨くことが
こんなにも
難しい
会えない人の
名を呼びながら
 

鏡に向かって
笑う
そんな嘘
ばかりついてる
 

紙に
知らない人の
名前を書いてる
多分
知らない人
 

叩く
ただひたすらに
それを確認だと
思うことなく

 


夕刊の
「帰」という字を
黄色く
塗っていくと
多いのか
少ないのか
わからない
 

朝のやかん
なぞって
もう一度寝る
エビの夢を
見ながら
 

階段
すべてが
階段
そんな
建物
 

生きている、と
生きている人に
言う
しまらない
とどかない
 
何かの反動で言葉をすべて捨ててしまいたくなった。
黙って書け、と言っている時点で、もう何も黙ってない。