あと65個


空腹に
ソーセージが詰められていく
もしかしたらそれは
ウィンナーかもしれない
そう考えると
すっかり縮みあがって
夜盗の助走は
終わらなければならない
 

明け方
横断歩道をキリンの群れが
渡っていく
あれは首長竜の一種だ
と弟に教える
弟は悲しそうな顔をしながら
恐竜図鑑にそのことを
書き足す
 
以下一つは頭だしのみ。
 

何事も
助走が必要なのだ
と思い始めている
 
やっぱり今日はきついなー
あと63個。
 

昨日荷物を
引きずっていた人が
今日は荷物に
引きずられている
その様子を見ながら
子供が母親に
時刻をきいている
 

町の外れにはピラミッドがある
それが偉い人のお墓だということは
小さな子供でも知ってる
どれだけ偉い人なのか、ということは
入学して二年目に勉強する
三年目になると子供たちは
先生に引率されて
ピラミッドの頂上に登る
先生は町を見下ろしながら
あれが学校、駐在所、何とかという商店
と町の地理をひととおり説明をする
それから数年後町を出た子供たちは
他の町で育った同級生や同僚に
懐かしそうにその話をする
そして大抵の場合
そんなピラミッドなど知らない
と言われる
 
あと65個。
質は問わない。とにかく書く。
言葉を全部吐き出したいのに
また溜め込むようなものを書き始めている。
今日は書けるだろうか。