四日間留守に


俺の死体が落ちていた
パンツの中だった
パンツは汚れていた
パンツは洗われてなかった
おまえによって

おまえは植木のひとつひとつに
水をやり続け
それぞれに話しかける
その姿は昔と変わってなかった
昔と変わることなく
俺のパンツは洗われてなかった
おまえによって

俺がおまえに愛を告げたのは
中野の暗く狭い路地だった
ポケットには千円札が一枚
それで二人はラーメンを食い
ビールを一本飲み
足りない分はおまえが出した
それから間違えることが無いよう
おまえは俺の身体の部位に
ルビを振った
それからだ、俺のパンツが
洗われなくなったのは
おまえによって

洗濯物を干すおまえの背中は
薄く、洗濯物のように綺麗だ
何故おまえは俺のパンツは洗わないのだ
その中に死体があるのだと
おまえは知っていたのか
気づいていたのか
目からパンツまでの
眩むばかりの高さで
俺は何度も気絶しそうになったんだぞ

そしてどうしたことか
俺の死体はさっきから
金玉と仲が良いのだ


四日間留守にしてました。
いとこの結婚式で鹿児島まで。


やがて光が空から降りそそぎ
何かの形のになると
わずかばかりの質量をもって
わたしたちの背中を押す
わたしたちは少し慌てたように
最初の一歩を踏み出す
けれど決して
慌てていたわけではないのだ
わたしの隣にはあなたがいて
あなたの隣にはわたしがいるのだから